2016年9月16日金曜日

旅10 力が自分に近づきやすくなること(1)

1961年8月17日、カルロスはドン・ファンのところにつくやいなや気分が悪いといいました。
すわれ、すわれ」とやさしくポーチに連れていき、ニコっとしてカルロスの背中をたたきました。

ドン・ファンやドン・ヘナロがカルロスの背中を叩くたびに「高められた意識状態」の関係を確認したいと思いこうしてコメントを差し挟んでいるわけですが、「高められ」た後、かなり長時間にわたる「活動」が行われていて、その間のことは通常の意識に戻っても忘れられているという設定ですので今回のように連続してドン・ファンとの通常状態の記録が書かれているときは「高められて」いないと推測されます。――高められた状態が本当にあるとしたらですが。

さて、カルロスが具合が悪いのは、去る8月4日に初めて体験したペヨーテの副作用です。(犬と戯れた話)
車にノートを忘れたので代わりにドン・ファンがブリーフケースを持ってきてくれましたが、手にものをもって歩いてはだめだと注意します。

カルロスは、自分はいつも三つ揃いのスーツを着ているので、その格好でナップザックを背負って歩くなんてとんでもない格好だとさからいます。
いま(2016年)だとスーツにリュックなんて見慣れた光景ですが、たしかに1961年では考えられないことですよね。時代を感じます。

追記2017/5/30)今、Margaret Castanedaの『A Magical Journey with Carlos Castaneda』を少しずつ読み進めています。その中で、カルロスが三つ揃えのスーツを欲しがって、三年待ってようやく契約にこぎつけた『ドン・ファンの教え』で入った金でスーツを買うエピソードがあります。この契約は1967年の出来事です。
1961年には三つ揃えのスーツを持っていなかったのでカルロスは欲しかったのです。
自分の夢を著書に書いたのでしょうか?

先のペヨーテ体験の結果、メスカリトがインディアンでないカルロスを受け入れたことでドン・ファンはとまどいを覚えましたが、自分が師から受け継いだ秘密の知を伝えることにしたといいます。(旅137)

これまでドン・ファンが狩りを教えてきたように戦士になる方法を教えようと思ってるといいます。(旅138)
カルロスは、ペヨーテの副作用のためかひどい夢・悪夢に悩まされていると訴えます。
カルロスが悪夢をとめる方法はないのか?とたずねると、

「ないな、放っておけ」
「もう、力に近づけるようになるべき時期だな。まず”夢を見ること(dreaming)”とわたり合うことからはじめるんだ」(旅139)

ここでドン・ファンが夢見について語り始めます。
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戦士は、力を探すんだ。力へたどりつくための道のひとつが、”夢を見ること”なのさ。
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”力”のせいでカルロスがメスカリトとふざけあうことになったし、バスの停留所(depot)でカルロスと出会ったことも”力”の導きだったといいます。
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道化(clown)がおまえをわしのところへ連れてきたんだ。おまえを示した道化、完璧なまえぶれだ。
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ビルは、道化呼ばわりです。
デミルは、カルロスがビルのフルネームを明かさないことを責めていますが、あたしだってハチ公の本名明かさないですよ。(pending)

戦士は夢を現実として扱うのだそうです。

そんなのは変だという議論をしながらカルロスはドン・ファンがこしらえてくれたトウモロコシのおかゆ(corn gruel)を食べます。
「現実」とはこういうことだよ、と示したいがためにカルロスが言います、
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「いまこうしていることを、なんて言う?」
「食う、というな」と言って、彼は笑いをこらえた。
「ぼくは現実と呼ぶよ」
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おれはそれをうつつというね。(みうらじゅん嘘)
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食後、散歩に出て「力の場所へ行くんだ」と言われます。
カルロスが逡巡していると、
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「さあ、来るんだ。バカげた恐れに甘えとるだけだ」彼は、私の背中をたたき、
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やさしくニッコリします。
「背中をたたいた」のでこちらも一応メモっておきます。(旅142)

谷の奥につくと大きな岩の上に座らされ乾燥肉を渡された。
それは「力の肉」だといいます。

何時間もそこで過ごして、ドン・ファンが変な行動をとるので不審に思うと、そこが「特別な水たまり」でそこの力に近づけるように自分たちの存在を知らせるようにしたのだといいます。(旅144)

水たまりと言われても、そこには水などないが、ドン・ファンはここには水があり、力もある、ここにいる精霊を誘い出さねばならない、と言います。

この水たまりは、おそらく『分離』の「水たまりの精霊」の場所です。
そのエピソードでは、1969年6月29日の話でドン・ファンがスピリットキャッチゃーを使って精霊を呼び出します。
なんと、今回のエピソードから8年も経ったあとの話です。

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