2016年8月29日月曜日

分離13 盟友の顔そして死とは(2)

ドン・ファンは、盟友が畑でカルロスに示した動作についての解説をしています。(分離239)

お前をみて歓迎したのさ。彼は、お前にはこのあたりのものでないスピリット・キャチャーと小袋が必要だってことを教えたんだ。彼の袋もほかの地域のものだ。お前には行くてをさえぎる三つの障害があるが、それが丸石だ。・・・

「三つのお願い」とか「八つの玉」とかエピック・ファンタジー系によくある使命ですがこの「三つの障害」という課題。おそらくここ以外で振られていないのでは?
だからまたしても落とし前がついていないと思います。

カルロスが見た盟友がいた畑の風景はどこかに実在する場所だそうで、いまいるドン・ファンの家の近くではないらしいようです。
要するに、カルロスは実際に泡に乗って本当に遠くに旅をしたのだということです。こうした呪術による空間移動を、カルロスはこの後もたびたび体験していきます。

ドン・ファンは、目をとじたままの水浴のあと家に戻り目をあけたとき隣にいた盟友の顔が「カルロスの死の顔」だといいます。


1969年9月5日の日誌では、カルロスがロスに帰ろうとすると、水の精のワナによるダメージ?から回復するまでロスに戻らない方がいいと言われそれから「死」に関する長い談義が続きます。

議論の糸口によかろうとカルロスが持ち歩いていた『チベットの死者の書』をドン・ファンに読み聞かせます。
そういえば、大流行しましたね、『死者の書』。あたしも持ってましたがどこかに行ってしまいました。内容も全然覚えていません。


カルロスは、「チベット人が”見てる”と思うか?」と尋ねると「かろうじてな」と答えて「チベット人が話とるものは死じゃない何か別のものだ」と言います。

やはし、民族によって世界の認知度合が異なっていて、ドン・ファンは自分たちが一番いけてると思っていたのでしょうか?
では、ドン・ファンは死をどう考えているのか突っ込むと死がどんなものかは言えないと言われてしまいます。(分離243)
このやりとり長いので引用しませんが、興味深い内容ですのでぜひ原本をご覧ください。

この章では、息子の死について再度の言及があります。(分離244)
ここでは息子の名前がウラリオ(Eulalio)となっていますが、前出の同115ページではユラリオとなっています。校正もれだと思います。
ものは試し、Google翻訳で発音を聴いてみました。

英語:ユラリオ
スペイン語:エウラリオ

スペイン語では冒頭のEは発音するということなのでウラリオはないのかも。

ドン・ファンによると死には二つの段階があるそうです。
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第一段階は薄い一時的記憶喪失。第二は死と出会う現実の段階なんだ。それはほんの一瞬にすぎん。そしてわしらはまたわしら自身になるのさ。死が静かな凶暴さと力でわしらの生を無にしちまうのはそれからなんだ。(分離244)

死は腹から入ってくる。意志の欠陥を通ってな。一番重要で敏感なところなんだ。わしがこのことを知っとるのは、盟友がその段階まで導いてくれたからだ。(分離246)
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てなことを言ったあとドン・ファンは奇妙なジェスチャーをします。
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両手を二つの扇のように広げて肘の高さにまであげ、親指がわきに触れるまでそれをまわし、次にヘソの上の身体の中心でゆっくり合わせたのである。(以下略)(分離246)(体術)
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これは、例の後にマジカルパスと呼ばれる一連の体術のひとつでしょうか?

呪術師であるってことは恐ろしく重荷なんだ
”見る”ことを学ぶ方がはるかに良いと言ったろう。”見る”ことのできる奴はすべてだ。それに比べたら呪術師なぞ悲しいもんさ」(分離247)

またまたドン・ファンの「呪術師」廃業宣言です
明らかにドン・ファンは「呪術師」を職業ととらえていて「見る」ことと切り離しています。

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「呪術ってのは自分の意志を鍵穴へさしこむことさ。呪術は干渉さ。呪術師は影響を及ぼしたいものの鍵穴を捜して見つけだし、それからそいつに自分の意志をさしこむんだ。呪術師が呪術師であるためには”見る”必要がない。知っていなければならんのはいかに意志を使うかってことだけだ」(分離248)
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呪術の効果を証明するようにドン・ファンは自分の意志を使ってカルロスの車のエンジンがかからないようにします。
ドン・ファンはカルロスの前でカラスの動作をまねた振る舞いをし、奇妙な笑い声をたててカルロスを気味悪がらせます。

カルロスは、催眠状態にさせられた結果、エンジンがかからないような気がしたのだろうと呪術の効能を疑います。

そんな催眠術をかけられるだけでもすごいと思いますが、それよりもシリーズを通してドン・ファンがこのように自身の力を誇示すのは非常に珍しいことだと思いました。

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