2016年10月2日日曜日

旅18 呪術師の力の輪

ここから『イクストランへの旅』の第二部「イクストランへの旅」に入ります。(旅314)

1971年5月(22日(旅8))弟子としての最後の訪問だそうです。

あたしの「おさらい」作業では、まだ『力の話』の段階ですのでドン・ファンとの別れに関する時期的整合性の確認は当分先になりそうです。

マザテク・インディアンの呪術師、ドン・ヘナロが一緒にいた
とあります。ここで晴れて、ドン・ヘナロがマザッテク(マザテク)インディアンだということが明示されました。

6か月前に訪れたとき、その二人に会っていた、とあります。

あたしの即席年表によると、これは、1970年10月にドン・ヘナロが「隠れ身の術」を見せた話のことです。(分離306)
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わたしが、二人はいつもいっしょなのか、ときこうかきくまいか考えていると、ドン・ヘナロが、自分は北部の荒野がとても好きで、わたしに会うのに間に合うようにやってきたところだ。
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ドン・ヘナロは、オアハカの住人なのでソノラ方面に北上してきたのです。
ドン・ヘナロは、いつものようにカルロスの石頭ぶりをからかいます。
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彼は、子どものようにからだをゆすり、足をバタつかせて、どうしようもないほど笑いころげていた。
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上記をわざわざ引用した理由ですが、今、平行してタイシャ・エイブラー著『呪術師の飛翔』についてのエントリーを書いています。

カスタネダの本には、ドン・ファンやドン・ヘナロが馬鹿笑いをするシーンが非常に多く登場します。

タイシャの本でも登場人物は違いますが、タイシャの呪術教師たちが同じように、さして面白くもない場面で主人公をおかしく思い笑い転げるシーンが何か所も出てきます。

どちらも師匠と弟子の対話集なので、ややもすると単調な内容になってしまいがちです。そこで会話の間にいろいろな気分転換のシーンを入れる必要があります。

座持ちのためにやたらと登場人物にトイレに立たせる日本人作家の作品であきれたことがありますが、カスタネダは「カルロス」の頑迷さ、西洋的合理性を師匠たちに笑わせるシーンを多用したと思います。

あまりにも『飛翔』と「ドン・ファン・シリーズ」のテクニックが似ているので、あたしは同一の著者じゃないかと疑っているわけです。(カルロスが『飛翔』の真の著者だと思っています)

カルロスは、半年前の訪問でドン・ヘナロが見せた奇怪な「力の誇示」について回想します。(「分離17 ひとつの移行期」

笑いながら、ドン・ヘナロがドン・ファンの家の床をすべるように「泳ぎ」ますが、前回の奇怪なふるまいにくらべたらどうってことないくらいだといいます。

カルロスは、これまでもドン・ファンたちの芸当を合理的に理解しようとする心が邪魔をして「見る」ことができないといわれていたのでぼぉ~っと眺めるようにしたができなかったと言い募ります。

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彼を(そうやって)見ているうちに、目がより目になってきた。(旅316)
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「立体視」を「交錯法(クロス法)」で見る場合、このように寄り目からスタートするときがあります。

ドン・ファンは、戦士に限らず人には前に飛び出すための「一立方センチのチャンス」があるといいます。その「幸運」をのがすなといいます。

あぁ、あたしは、これまで何万平方メートル逃してきたことだろう・・・。

ドン・ファンがカルロスの車を動かなくしたことを覚えているか?といいます。

ドン・ヘナロがもっといいことができるといいます。ドン・ファンとドン・ヘナロは二人で漫才のような軽妙なやりとりを続けながら「(カルロスの)車を調べよう」といいながら表に出てカルロスが車をとめたところに行きますが、ロックをかけていた車がなくなっていました!

ドン・ヘナロは足の筋肉だけで車を運転するマネをしてさらにカルロスをびびらせます。(旅321)

見ているうちに可笑しさを通り越してそこらの石を必死に投げてイライラしているとドン・ファンがわたしのわきへやってきて、背中をたたきました。(旅322)

みじめなさまを見せて恥ずかしいというと、ドン・ヘナロもカルロスの背中をくりかえしたたきます。

追記2017/6/6)これまで見逃していましたが、この背中を叩く描写は、かなり「高められた意識」へ持っていく体術に近いのでは?と思いました。

カルロスは、車消失事件を共謀者を巻き込んで大人数で運んだケースや催眠術をかけられたトリックだと勘ぐりつづけます。

ドン・ヘナロがふざけて車はどこにいったんだと、そこらの石をひっくりかえして下を捜します。そのあと怒ったふりをしてその石を放り投げてからかいます。
ふざけた車探しが続きます。

さんざん探したあと、ドン・ヘナロが自分の帽子で不可解な「凧」をつくり飛ばします。見とれていると帽子がおりた場所に車がありました。

きつねにつままれたカルロスは茫然として二人を車に乗せて家に戻ります。

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