2016年8月15日月曜日

分離6 ジェナロの滝渡り(2)

ジェナロの家に出発したのは1968年10月5日。
到着までどれくらい時間がかかるのでしょうか?
着いてからは、二日間植物集めに山へでかけ(分離120)、三日目の夕方に三人は自分たちの場所に座って座禅みたいなことをします。

いつものように方角について後の確認のため記録しておきます。
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ドン・ファン西の山並みを向いて
ジェナロ北を向いて
カルロスは南東を向いて
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家でドン・ファンとカルロスがいつもの問答をしているとドン・ヘナロはふざけて「腕も手も使わず頭だけで逆立ち(分離122)」をします。普通の人間の動作では不可能なまるで「頭で座っている」感じと書いています。

ドン・ヘナロは、ここで後の滝渡りにつながる超常的な現象を見せて予告しているのだと思います。

ドン・ヘナロは用を足しに藪に入っていくとドン・ファンが言います。
ジェナロがクソをすると山がふるえるんだ」(分離125)

これも超常現象というより芸?ですが、ヘナロは、

自分の生と死以外に人間には何がある?」(分離123)

といったような真面目な会話の最中にちゃちゃを入れるのが好きなようです。

続いて、ドン・ジェナロが『別の世界』について話だした。とあるのは1968年10月17日(分離125)の日誌ですが、この日あるいは数日前の記録とするとカルロスは結構長い間、ドン・ヘナロのところにいたことになります。

シリーズ内の整合性確認のためヘナロが語った世界の構造について記しておきます。

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支配的呪術師はワシで、自分もワシになることができ、他方黒呪術師は『テコロテ』(フクロウ)などである。また黒呪術師は夜の子供であり、そうした者にとって最も役に立つ動物はヒョウ、ヤマネコ、野鳥(フクロウ)である。さらに『ブルホ・リリコス』(叙情的呪術師)は別な動物――たとえばカラス――を好む。

支配的呪術師は弟子をつれて旅することができ、別な世界の十の層を通り抜ける。
支配者は一番下の層から出発し、それにつづく一連の世界を通って一番上まで行くが、黒呪術師と叙情的呪術師はせいぜい三つの層しか通り抜けられないのだと言った。
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仏教にも似たようなセッティングがありますな。

ドン・ファンは、既報の通り「カラス」を好みますので「叙情的呪術師」でしょうか?
でも、そうすると「三つの層しか通り抜けられない」のでしょうか?

ドン・ファンは時代に残された呪術師のリーダーですからそりゃないのでは?
実際、後にドン・ファンは弟子をつれて旅立ちますので、やはり支配的呪術師なのでしょう。

別の世界について話したその日、ドン・ファンとドン・ヘナロは、カルロスの他に、ドン・ヘナロの弟子の、ネストル(Nestor)とパブリト(Pablito)を拾って西の山にある滝に向かいました。(分離126)

これからドン・ヘナロは、滝渡り、というか登ってからもの凄い曲芸を披露するわけですが、滝に登る前に、ドン・ヘナロが身支度をします。

それまで被っていた帽子を脱いでヘッドバンドをつけてワシの羽を3本さしたとあります。
ドン・ヘナロは”マザテック・インディアン”です。この部族が羽飾りをつけるのかどうか少し調べてみましたが確認できる情報がありませんでした。

滝を登るドン・ヘナロを見ているドン・フアンの様子が書いてあります。

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ドン・ファン、彼の視線は動かず、まぶたは半分閉じていた。
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これは例の3D映像を見るための目の使い方でしょうか?
日本で座禅(?)を組むときによく目を半眼にしなさいと言われます。
(あたしの経験は、お寺の座禅ではなく剣道をやっているとき座禅をやらされるのですがその時の先生の指導です)
半眼にすると対象に対して焦点を絞り込まないので”見る”ことができるようになるのかもしれません。

後の反省会(1968年10月23日分離131)でドン・ファンはカルロスにヘナロが実際にやっていたことを説明します。
ちなみにこの日誌に記載された反省会では「また近いうちに中央メキシコに行こうと」と言っていますので、彼らはドン・ファンの居場所に戻っています。

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人間は光の繊維のようなものでできており、それがタマゴの形になるように身体にまきついているのだと言った。ヘソのあたりから一組の長い繊維が出てくる。その繊維がジェナロのバランスの秘密だ。(分離133)
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半眼にすると見えるのかなぁ。こんなニュースを見つけました。
「ヒトはこの世に出現した瞬間に光り輝く」


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