2016年11月19日土曜日

力の話(1) 概要

ひさびさに、カスタネダの自著についておさらいを進めていきます。

シリーズ四巻目。『力の話』です。
今回は、太田出版から出ている新訳の本で、2014年4月8日第1版第1刷発行を使っています。

前に、この四巻目だけが、なぜ『未知の次元』というタイトルで「講談社学術文庫」に収録されただろう?と書きましたが理由がわかりました。

同じ太田出版から出ている『時の輪』(北山耕平訳)の訳者によるあとがきで事情がわかりました。

以下、引用します。
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1975年までに日本では三冊のカスタネダの本が二見書房という欧米の翻訳娯楽小説を扱う出版社から出版されていた。前述の『ドン・ファンの教え』、二冊目の『分離したリアリティ』、三冊目の『イクストランへの旅』の三冊だ。時期的には、ほんとうはもう一冊1974年にアメリカで出版された『力の話』が日本語訳されて出版されていてもおかしくなかったのだが、この本の翻訳権がアメリカのベストセラーの噂を聞きつけた大手出版社によって横取りされてしまい、同書は1979年になるまで日本語訳が出版されることはなかったのである。それどころか1978年には五冊目の『力の第二の輪(ママ)』の方が日本では先行して発売されるという異常な状況だった。(時の輪278)
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なるほどね~。横取りですか。

『時の輪』は、あまり具がなくて読むところが少ないコレクター・アイテムですが、買っておいてよかった~。

あたしは、前にも書きましたが、なぜか『未知の次元』を間違えて二冊買ってしまいまして
いつの間にか一冊どこかへ行き、先の「自炊作業」で残りの一冊もPDFと化してしまいました。

なんだか寂しいなと思っていたら、なんと!この一連の「カスタネダの旅」を進め始めてから職場のデスクの引き出しの中から『論語』と一緒にひょっこり出てきました。予兆ですな。

この『力の話』では、最後にカスタネダとパブリートが谷底に跳躍して終わります。
その後、どうなったかについては最後の著書『無限の本質』が1999年に出るまでは謎のままです。

1974年に『力の話』が出て、続巻の『力の第二の環』が出たのは1977年。『力の第二の環』では、谷底への身投げの後の話はまったくなく、普通にカルロスが生活を続けています。
(もっとも『力の話』の原稿を書いて出版しているのだから生還しているにきまってますね)

さて、この『力の話』から、いきなりドン・ファンのインテリ度がアップしてフィクション度もアップします。扉には、サン・ファン・デ・ラ・クルス(San Juan de la Cruz)という詩人の「孤独な鳥」という作品が引用されています。

この詩では、第三の規則に「孤高の鳥は、つるまない」(あたしの意訳です)というのがありまして、ピア・プレッシャー&ヒラメ王国の日本で昼飯も一人で食べられない男たちにかみしめてもらいたい一節です。

追記2018年6月14日)日本語による解説のあるブログにリンクを張らせていただきます

マーガレット・カスタネダの本とWikipediaの英語版では『力の話』は、カルロスの71年~72年の体験を書いているとあります。(Maya 2章)

『力の話』は、これまでの日誌形式の書き方ではなく、冒頭に1971年の秋とだけあり、その後日付については一切触れていません。

中で述べられている時系列がとりあえず前後せず順番に次の出来事に進んでいるということだけはわかりますので、一応、カルロスがドン・ファンとドン・ヘナロに免許皆伝をもらうということで修行の区切り、そして師匠たちとの別れが示唆されているので1971年~72年ということが想定できるという感じです。

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