2016年11月24日木曜日

力(6) ナワールの時に~ナワールの囁き~知覚の翼

今回も三章進みます。

■ナワールの時に

ドン・ファンの指示通りにドン・ヘナロの家を訪問すると二人が待っていました。

その翌日、ドン・ヘナロが二キロ離れたユーカリの木のある林まで行こうといいます。
ドン・ヘナロがいきなり叫び声を発したかと思うと、15メートルほど離れたユーカリの木の三十メートルほどの幹に地面と平行して立っていました。

パニックに陥ったカルロスに対し、ドン・ファンが、大きな危険やストレスに直面したときに使うテクニックを教えます。(力216)

腹をへこませろ。へこますんだ
横隔膜を下げて喘ぐように四回呼吸し、それから鼻で四回呼吸する。最初の四回の呼吸はからだの中央が揺さぶられる感じがしなくてはならず、しっかり拳を握ってヘソの上に置くとからだの中央に力が入って短い呼吸と深い呼吸がコントロールしやすくなる。そして横隔膜を下げているあいだに八つ数えるまでこれを保持しなければならない。息を吐くときは二回を鼻から、二回を口からで、そのスピードは個人の好みでいい。(体術)

また、「ヘナロを見つめるんじゃない」、「まばたきをしろ、まばたきだ」と言われます。

こうした「じっと見るな」という指示ですが、非日常的な現象に「耽溺」すると頭が変になってしまうからなのかもしれません。

次々と木を使った芸当を見させられるカルロスは、水につかってようやく我を取り戻します。

この章で、ドン・ヘナロがカルロスの恩師(benefactor)でドン・ファンはカルロスのトナールを扱う役目だったとはじめて打ち明けられます。
逆にパブリートとネストール、ヘナロの二人の弟子の恩師は、ドン・ファンだそうです。
ドン・ファンにも同じように師と恩師がいたといいます。(力229)

ドン・ファンは、これまでも自分の恩師については折に触れ話していましたが、担当の異なる二名の先生がいたというのは初耳です。


■ナワールの囁き

カルロスは、ふたたびユーカリの木の下でドン・ヘナロと向き合います。

ドン・ヘナロの曲芸を見ているとドン・ヘナロが糸のようなものに引っ張られ滑空しているのが見えました。

カルロスの左右の耳にドン・ヘナロとドン・ファンが別々の言葉をささやき一緒に飛ばないかと誘われます。(力239)
二人が耳元で囁くことは恩師と師が行う最後の仕上げなのだそうです。(力249)

呪術師にとって恩師をもつのはとてもむずかしく、弟子のエリヒオはずっと恩師を見つけられずにいると教えられます。

何年か前に、メキシコ北部の砂漠で放浪する若いインディオたちも恩師がいなかったそうです。(力244)

■知覚の翼

カルロスは、ドン・ファンと山の上で一日過ごしたあと、ヘナロの家に戻りました。パブリート(本名パブロ)がこれから来るのだそうです。

パブリートは陽気できさくな性格でネストールは逆に陰気で内向的でした。

カルロスが、訪れてきたパブリートにネストールの近況をきくと別人のようになっているといっただけで話題を避けられてしまいます。

カルロスがドン・ヘナロを恐れるのと逆にパブリートは、ドン・ファンを恐れています。これからドン・ファンが来るのを知ったパブリートはとんで逃げて行きます。

ふたたびカルロスの両方の耳にドン・ファンとドン・ヘナロの二人が別々に囁きます。(力260)

たちまち不思議な感覚におちいり、幼児としての知覚体験がカルロスに訪れます。

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