2016年9月7日水曜日

旅3 自尊心をなくす

ドン・ファンに引きあわせてくれた友人にドン・ファンとの近況を報告すると『その老インディアンはただの変人だ』といわれます。

この友人というのは例の「ビル」ですな。

そういわれても、ドン・ファンの言い分には腹がたつものの、後から落ち着いて考えてみれば自分の人格に対するコメントは図星だったと思い直し、もう一度訪ねることにしました。

それが1960年12月28日です。

行くとさっそくドン・ファンに散歩に誘われます。

ドン・ファンとカルロスの付き合いをみますと結構、歩き回りますね。ドン・ファンも自分は散歩が大好きだと言ってます。

「わしはたくさん歩くのが好きでな」(旅22)

どれくらい周りが自然なのか里なのか不明ですし、アリゾナの住まいなのか、ソノラの住まいなのかカルロスがぼやかして書いてあるのでわかりません。

さて、その散歩でドン・ファンがカルロスに『適切な歩き方』を教えてくれます。(旅41)
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歩いているときに道や周囲に注意を払えるように、指をかるく曲げていなければいけない。歩くときにはぜったいに手に何かを持っていてはいけないと言った。どうしても何かを持たなければいけないときは、ナップザックやショルダーバッグを使うべきだと言うのだ。
手を特別なかたちにしておくと、より多くのスタミナや注意力が得られるのだ。(体術)
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カルロスは、言われたとおりにしますが、注意力もスタミナも別にいつもと変わりはなかったと少し馬鹿にした気持ちになります。

途中、カラスを予兆だといったり、いきなり一陣の風をドン・ファンの発言に関する同意だといってまどわせるドン・ファンにイライラして腹を立てたカルロスに対し、お前は自尊心が高すぎる。
自尊心を捨てるようにいいます。

またまた人格攻撃されて腹の立つカルロスですが、ドン・ファンにへとへとになるほど歩かされると、さきほどの怒りをすっかり忘れているに気づいたカルロスが言います。

「ぼくはいったいどうなっているんだろう。あれほど怒っていたのに、なんで今は腹が立たないんだろう」
「わしらを囲む世界はとても神秘的なのさ。そう簡単にその秘密はわからんさ」

自尊心をなくすための練習だということで植物に話しかけるように言われます。

困惑するカルロスに言います。

「なにを話しかけるかってことは問題じゃない。ただなにか話しかければいいんだ。大事なのはそれが好きだという気持と、それを自分と平等に扱うということさ」

こんまりさん(”片付け”の人ね)と同じですね。

植物にあいさつをするやりとりはまさに西欧人が未開の文化に期待するアニミズムそのものですな。だから『片付けの魔法』もヒットしたのかもですね。

散歩から帰る行程で、不思議なことに「適切な歩き方」をしたらドン・ファンのすごいペースの歩き方についていけたと感心するカルロスでした。

「適切な歩き方」は簡単なのでやってみると効き目はどんなでしょうか?

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