2016年8月17日水曜日

『魔女の夢』フロリンダ・ドナー著(2)

『魔女の夢』後編です。

フロリンダ・ドナーの経歴の一部についてはおそらく日本語の情報では初めてのものになると思います。
威張っても仕方ないですが。

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□著者について

フロリンダ・ドナーは、もちろんペンネームですが、いろいろな名前を使っているのでこれもウィキの情報をベースに整理しておきます。

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Florinda Donner (originally Regine Margarita Thal, later Florinda Donner-Grau)
フロリンダ・ドナー(本名は、レジーン・マルガリータ・タル、後にフロリンダ・ドナー・グラウ)
1944年生まれで、この原稿を書いている時点ではカスタネダの死後、消息不明です。
日本語のサイトでカスタネダの妻と記してる記事を読んだことがありますが違います。
追記・修正)「妻」の件、間違いです。すいません。1993年10月1日にラスベガスでカスタネダと入籍をしたことを知りました。(Amy 413)
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読み始めて日が浅いエイミー・ウォレスの『Sorcerer's Apprentice』によると、ドナーとエイミーはドナーがまだ本名(愛称は”ジーナ”)で生活をしカルロスの仲間に入る前に知り合っていたそうです。

1970年代、ベストセラーになった『ドン・ファンの教え』には映画化のオファーが殺到し、あの巨匠フェデリコ・フェリーニ(※1)も意欲を燃やしていたそうです。

追記2017/05/12:あのフェリーニが、カルロスに会って感銘?を受けたというインタビューがこの本のエピローグで紹介されています。)


ハリウッドの社交界に華麗なデビューを果たしたカルロスは、フェリーニとも親しくなりましたが、ジーナ(後のフロリンダ・ドナー)は、そのフェリーニの愛人だったそうです。(カスタネダのハリウッドでチャラチャラしてるイメージが信奉者には幻滅かもですね)

当時、フェリーニは52歳なのでまだまだ現役で愛人との交際いけますな。
ちなみに93年に73歳で亡くなりました。
かみさんのジュリエッタは夫が亡くなった翌年亡くなっています。(※2)

ドナーは、1983年に『Shabono: A Visit to a Remote and Magical World in the South American Rain Forest』という人類学の著書を出版しました。
Alto orinoco5.jpg
ヤノマミ族(ウィキより)

最初はアマゾンのYanomamiインディアンの暮らしを取材した名著として高い評価を得ましたが、その後、剽窃が明らかになり、加えて創作という批判にさらされています。

炎上が落ち着くと、ハナから科学論文と言ってないのにそんなに科学界がムキにならんくてもいいだろうなんて話もあったとウィキにあります。百歩譲って創作だとしても剽窃はいけませんな。

カスタネダの作品はさすがに剽窃の批判はありませんが、ご承知のようにノンフィクション性を疑う声が多いです。(追記2017/05/12:シリーズ後半はあたしもフィクションと結論づけました)

お互いに似たもの同志、惹かれあったのかなぁ。

追記2016/11/24
「ヤノマミ族」について日本語の記事を見つけましたのでリンク張っておきます。

未だ外部と接触したことのないアマゾンの部族の姿が新たに撮影される。

 ※フロリンダは接触したのでしょうか?


□リンク(環)について

『魔女の夢』の本文にはカスタネダの著作の検証(あたしの趣味)に役に立つ情報はまったくありません。
カスタネダの序文もそっけないくらい淡泊なものですし、イントロとエンディングにおけるフロリンダ・マトゥス(クララ・グラウ)とのやりとりにもヒントはありませんでした。

※読み物としては、同僚?のタイシャ・エイブラーの『呪術師の飛翔』よりもオリジナリティが高く面白いです。

ところでカスタネダの著作にも多くあらわれる人や事柄のつながりを意味する『環』という文字について。あたしたちがよく知っているのは考古学や生物学で登場する「ミッシング・リンク」=「失われた環(わ)」です。

あたしがこの「ミッシング・リンク」を知ったのは小学生の時、学校の図書館で考古学の本を読んだときです。(子供は考古学の謎好きですからね)
あたしは、「失われた環」についているルビ「リンク」が小さい字というのと「環」を「わ」と読むので、20代になるまで「リング」だと思い込んでいました。

今は、ハイパーリンクも含め、リンクはすっかり日本語にもなっているので「つながり」という意味がスっと浮かびます。でもなんで「環」なのでしょうか?
「リンク(link)」とはもともと鎖を構成する一個一個の「輪」を意味するのだそうです。だから「つながり」の元の意味は「輪」なんですね。

□ベネズエラ呪術マップ

最後に、舞台となるベネズエラとその地方についていつものようにグーグルマップの力を借りましょう。メルセデス・ペラルタが暮らしているクルミナという町が本当はどこなのか推測してみるのも一興かと思います。



ドナーは、はじめ呪術師が多いといわれているベネズエラ西部ヤラクイ州にあるソルテス(仮名)という町に行くつもりだったそうですが現地の人のアドバイスにより行くのをやめました。



その代わり、ドナーは、メルセデス・ペラルタが治療をしているベネズエラ北東部ミランダ州にあるのクルミナ(こちらも仮名)を選びます。



※1:フェデリコ・フェリーニ(Federico Fellini, 1920年1月20日 - 1993年10月31日)はイタリア・リミニ生まれの映画監督、脚本家。「映像の魔術師」の異名を持つ

※2:フェリーニには妻のジュリエッタ・マシーナがいて添い遂げています。(Giulietta Masina, 本名: Giulia Anna Masina, 1921年2月22日 - 1994年3月23日)

1 件のコメント:

那賀乃とし兵衛 さんのコメント...

「魔女の夢」おもしろい本ですよね。
「シャボノ」について少しだけ書いていますので、よろしければどうぞ。http://meratade.blogspot.jp/2016/10/blog-post.html