2014年5月23日金曜日

小さいおうち(日本映画と日本の小説) (一)

昨年、深センに行ったばかりなのに、またまた先日、ひょんなことから東南アジアへ出かけることになりました。

大層不本意な仕事状況での渡航でしたのでまったく気乗りしませんでしたが機内で山田洋次監督の『小さいおうち 』を観られたのが不幸中の幸いでした。

山田作品のファンとしましては『学校Ⅳ』と並ぶ傑作です。

とても気に入ったのであとさき逆ですが原作の小説も読みました。
この二つは設定は似ていますが主人公の女中タキの振る舞いが微妙に異なっていまして別の作品といってもいいかもしれません。
でも山田シナリオのアレンジが優れているので原作者もオーケーしてくれたのでは?と思います。

この映画についてはプロの批評家から素人の方々までいろいろ書かれているので情報過多かもしれませんが、いくつかコメントを記しておきたいと思います。

以下、ネタばれですのでまだの方は読まないでください。

平井家の女中タキが主人である時子が出征する恋人、板倉正治に会いに行くのを押しとどめます。
奥様が出かけていくのではなくてこちらに出向いてもらうようにお願いする手紙をしたためてくれれば自分が板倉に届けてくると提案します。

映画と原作で共通におかれた「観客・読者」の想像にゆだねられたのが、この手紙の扱いです。

原作のタキ本人の「自叙伝」では翌日、その手紙を見た板倉が平井家を訪ねてきたと書かれているにもかかわらず、タキの死後、未開封の手紙が発見されます。
気持ち半分ですがいずれ本として出版するかもしれない文章(自叙伝)なのでタキは「嘘」を書いたとするのがあたしの解釈です。

映画では、シンプルに手紙を届けたとタキは主人に嘘を伝えていたので板倉は現れなかったという展開になっています。

余談ですが、二人の密会の情景の一部はタキが伴をしていない時もあるので自叙伝の映像表現上なかなか難しいものがありますね。

長くなったのでわけます。

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