2010年12月18日土曜日

バイカルの鉄

少し前に、山田洋次監督の「馬鹿まるだし 」について触れたので早速、DVDを借りてみました。
ハナ肇演じるヤスさんは、「ちょっと足りなくて粗野だけど、善良で、お人よし、おだてにのりやすく、失敗もするが、憎めない」。

すなわち、寅さんタイプのキャラなんですね。
山田監督は落語も作るので、落語に登場する粗忽な熊さん系のキャラクターが好きなのでしょうか。

実際の生活で親戚や職場にいたら、これはハタ迷惑ですが、映画のキャラほどではなくても周囲には少なからず似たようなタイプの人間っていますよね。

もちろん、寅さんシリーズは、あたしも大好きですが、山田監督が創造したキャラでは特に『バイカルの鉄』ってのが好きです。
「馬鹿まるだし」のヤスさんもシベリア帰りですが、この鉄も「バイカル」帰りです。

丹波哲郎が演じる「バイカルの鉄」は、映画『十五才 学校IV 』に登場する老人です。
この映画は、少年が旅を通して成長する姿を描くロードムービーで、バイカルの鉄との出会いは特に重要なエピソードです。
鉄は、負けん気の強い老人で、ある種、グラントリノのイーストウッドに通じるような偏屈もので家族とも離れた一人暮らし。

少年は、たまたま鉄の家に厄介になりますが、よる年波に勝てず・・・・。
息子役の前田吟と少年のやりとりは、映画のクライマックス。
ネットですっかり頭が呆けてしまった人々にはぜひとも観てもらいたい一品です。

山田監督がシナリオを作る過程を記した貴重な本があります。

シナリオをつくる 』( 山田 洋次 朝間 義隆) 筑摩書房 (1994/01)

山田監督と脚本家の浅間義隆のお二人が神楽坂にある旅館「和可菜」に篭って「寅さん」の脚本を練る様子をテープにとって本に起こした内容です。

あたしもこの「和可菜」には、なんどか厄介になっています。山田監督とちがっていいアイデアはさっぱりでしたが。

二人がこまかくこまかく話し合いをしながらストーリーを煮詰めていく様子は、想像していたシナリオ製作のプロセスとまったく違っていて非常に勉強になりました。

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