2012年7月6日金曜日

山んばと空とぶ白い馬

一時期、埼玉に暮らしていたことがあります。

図書館が充実していたこともあってとにかく定期的にでかけては、子供向け図書のコーナーにある本を片端から借りていました。

トムは真夜中の庭で 』をはじめとするピアスの作品、有名どころではサトクリフの歴史物などは代表的なものです。
今の場所に越してきてからも冊数は減ってはいるものの習慣は続いてます。
適当に目についたものを借りるので古かったり新刊だったり。駄作だったり思わぬ佳作だったり。

表題の『山んばと空とぶ白い馬 』(いぬいとみこ著)は、76年の発行ですから古いといえば古いですな。今では書けないような身体的特徴をあらわす言葉も頻繁に登場します。

山に別荘を建てた新人作家の生活を描いたファンタジー作品です。
雑誌に連載していた作品だそうで、連載物にありがちなだらだら感がありますが、あたし的には非常に興味深く読んだので記しておきます。

タイトルに登場する白い馬が自然の「象徴的」存在であるのに対し、山んばは、非常に現実的な存在として描かれています。
超常的能力を持ちながらきわめて日常的な存在でもあり、山村の人々と適宜交流を持ったりしています。

読み進めるうちに、山んばがうーむ、誰かに似ている。山の生活初心者の作家も誰かに似ている!
そして、はた!!と思い至りました。
カルロス・カスタネダです。もちろん、作家がカスタネダ。山んばは、ドン・フアンです。
作家は、山の生き物の導きで「キノコ」を食べて空を飛びます。
ドン・フアンのシリーズでも「抽象的」に空を飛ぶ状況が描かれています。もちろん、キノコやサボテンの力を借りています。

小説のなかほどの山の風景の描写に「ホビットのすみかのような」という記述があります。
ホ ビットは、ドワーフやトロルと異なり、トールキンの創作したメタ人類です。「山んば・・」の著者は、誰もがしってる「小人」のつもりでホビットを引用して いますが、トールキンの著作を気に入っていたのでしょう。ホビットもカスタネダの作品にも共通している世界観はアニミズムです。下世話な言い方ではエコ? ニューエイジ?

「山んば・・・」も人間対自然という大テーマについて主人公が真正面から向き合います。
The Hobbitは、1937年の発刊ですが、カスタネダの「ドン・フアンの教え」が出たのは1968年。
Wikipediaで調べたところ著者のいぬいとみこさんは残念ながら故人です。お話を伺ってみたかったなぁ。

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