2011年4月13日水曜日

勤め人の墓場

象が墓場に行くときは、象は、「俺も潮時だな」と思って墓場に出向く。
滝の裏側に墓場がある、なんて話も、子供の時読んだ。

あたしは象と付き合ってたことがあるので知ってるが、象は、かなり頭が良い。
しかし、いくらなんでも先輩象が、現場を去るときに、後輩たちに墓場のありかを教えているとも思えない。

漠然と、仲間内で知っている。

猫もしかり。
子曰く「猫の将に死せんとするとき、その姿消すや、悲し」と。
の言葉(ウソ)のとおり。

サラリーマンも、仕事で通用しなくなると、ある日、ふと、デスクなりから、スッと立ち上がる。
そして、おもむろに、ネクタイをはずすと、椅子の背もたれに、無造作にかける。

周囲のみんなも、先輩がどこへ赴くか察しているので、たずねたりしない。

墓場は、オフィスのどこかにある。職場の規模によっては、フロアー全体が墓場のこともある。
○□区にある、◎△×という商業ビルの七階には、誰にも知られていないレストランがある。
知人が、うっかりまぎれこんでパニックになったことがあるそうだ。
あるいは、映画『マルコビッチの穴』に登場する7と1/2階のような。そんな感じだ。

あたしも、もちろん自分が赴く場所はしっているが、誰から聞いたわけでもない。
みんなも象のように、おのずと知っているが、これまで誰も語ることがなかったし、これからも語ることはないだろう。

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勤め人の墓場<解題>  :この話の由来です。
勤め人の墓場<完全版> : 落語の噺に仕上げたものです。

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