2016年11月15日火曜日

”フォロワーズ(The Followers)”の話(後篇)(3)『ドン・カルロスの教え』(32)

「ぼくは本当のことを知りたくてここに来ました」

グレッグは年取った紳士に少し皮肉っぽい感じで話しをした。
「ぼくが知りたいのは、彼が自分で燃えたのか?それともあなた方が彼を焼いたのか?です」

男性はどうするか決めかねてグレッグをしばらく見つめていた。グレッグは悪人には見えなかった。彼は礼儀正しく、そして正気に思えた。

彼は明らかに深く悩んでいるようだった。しかし、グレッグが言っていることは長年葬儀場で働いていろいろなことを経験してきているが、こんなばかばかしい話を聞くのははじめてだった。

「まぁ、おかけなさい」ようやく言葉が出た。

10分ほど待たされて、身なりの良い高齢の女性が応対を代わりグレッグは同じ説明をした。彼女は真摯な表情で話に耳を傾けた。
しかし、グレッグが「内なる炎」の部分にさしかかると頭を揺らして大声で笑いだした。

グレッグは女性を見つめほほえんだ。手のひらを上にむけ手をあげ、肩をすくめた。彼女は背の高い、堂々とした女家長のモデルになれそうな人物だった。

彼女はグレッグによりかかり彼女の腕をまわし母親のように抱きしめた。

「彼はもっといい場所にいきましたよ」とグレッグの背中をさすった。

グレッグは抱擁をといていぶかしげな顔をした。
「それはわかるんです」

「でも、ぼくが知りたいのは・・どこのいいところかってことなんです。確かに火葬されたのですか?」

「私がこの目でみましたよ」彼女がきっぱりと言った。
「ぜったいに?」
「彼の魂は去りました」

グレッグは女性にお礼をのべ車に戻った。

車のドアを開けて乗り込もうと思ったが立ち止まった。からだがマヒしたような気がした。
がっかりしたようなホっとしたような感じだった。
この6年間で100万に1回ぐらいのことだったがRichard DeMilleのことばが頭のよぎった。

「カスタネダは、ただの詐欺師ではない。彼のウソは私たちを真実に導いてくれる。彼の話は本当の話ではないのに真実で一杯だ。これは呪術師の贈り物だ、まったく正反対のもの―知恵と欺瞞を同時に扱う曖昧模糊とした魔法の書である」

グレッグはかつてカルロスのものだったお気に入りのスエードの肘当てがついているコーデュロイのスポーツ・ジャケットを脱いで、車の後部座席に投げ入れた。

さぁ、次に行くときがきた。

(”フォロワーズ(The Followers)”の話(後篇) ~完~)
(『ドン・カルロスの教え』~完~)

いかがでしたか?

あたしも各種作品をランダムに読み進めているので、次から次へと発見が続き楽しんでいます。
特に、Google Map を使ったヴァーチャルな旅が、こんなにワクワクするものとは思ってもみませんでした。感動の連続です。

内容についても、たとえばカスタネダの苗字のAranaですが、Amy WallaceがAranhaと書いていてあれ?と思ったのですが、この錯綜についてはMargaret Castanedaが詳しく書いていることを最近知りました。
間違っていたことなどは随時、後追いでも訂正していきたいと思います。

デミル(Richard DeMille)も改訂版を出しているそうです、そちらも買ってみる必要があるかもしれません。


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