2016年11月26日土曜日

力(8) 呪術師の戦略

この章は、これまでの総括に近い内容になっています。

(三人でパブリートの家に逃げ帰った翌日の)昼ちかくにカルロスがドン・ヘナロの家にいくと、ドン・ファンが彼を待っていました。

ドン・ファンは、ヘナロは山を揺らしに出かけていると言い、ヘナロのお気に入りの場所に移動することになります。

ドン・ファンによると、これから最後の課題である呪術師の解釈に進むのだそうです。

わしらはとうとう呪術の最終段階にさしかかっとるんだ。これまでにお前に必要な指示はすべて伝えてあるが、とりあえずいったん立ち止まり、過去をふり返り(反復)、自分の歩みを見なおさねばならん。(中略)お前の力の場所で話した方がいいと思っていたんだが、おまえの恩師はヘナロだから、こういう話は彼の力の場所でしたほうがいいだろうと思ったんだ」(力293)

カルロスの”力の場所”があるのはメキシコ北部の砂漠地帯にある丘の上で、何年も前にドン・ファンが”授けて”くれた場所です。
ヘナロのお気に入りの場所は、ヘナロの家の西側にある大きな岩で、上から深い谷底が見下ろせました。

お前の”トナール”を受け持っとるのはわしで、”ナワール”を受け持っとるのだがヘナロだ」(中略)「わしがお前と一緒に、あるいはお前にしてきたことは、ただただお前の”トナール”の島の掃除をして秩序を取り戻すためだった。(中略)ヘナロの仕事は恩師として、お前に非の打ちどころのない”ナワール”のふるまいを見せてそこに到達する方法を示すことだ」(力294)

たいていここで、師は弟子に最後の十字路までやって来たことを伝えるものなんだが」(力295)
(中略)「わしの考えでは、最後の十字路、最後の段階なんてものは存在しない

てなことを最後の教えを5時間ぶっつづけで語った後、カルロスとの最初のバス停での出会いはドン・ファンが自分の”意志”でカルロスを捕まえたことを伝えます。(力298)

戦士は相手の右目をじっと見るんだ」彼は言った。「そうすると相手は内部の対話ができなくなる。すると”ナワール”が優勢になる。危険な術だ」(力299)(体術)
これを「戦士のまなざし」と呼ぶのだそうです。

世界をみる方法はひとつではないということを理解するための、生まれたときから持っている世界の見方を捨て去る修行のひとつに「正しい歩き方」があるのだとといいます。

----------
正しい歩き方は一種の目くらましだ、と彼は言った。戦士はまず両手の指を曲げ、腕に意識を集中する。それから、自分のつま先から始まって水平線で終わる弧の上にある一点を、目の焦点を合わせないで見る。すおすることで彼の”トナール”を文字どおり情報で満たしてしまうのだ。すると、世界を描写する構成要素と一対一の関係を持っていない”トナール”は、自分に対して直接語りかけることができずに黙り込んでしまうのだという。(力301)(体術)
----------

「正しい歩き方」に加えて、「ありのままに行動する」ということの重要性についてもドン・ファンは語ります。

履歴を消すこと、夢見ることに関する基礎修行の話が続きます。

ですが、カスタネダ本人もまるで言い訳のように書いていますが(力297)ドン・ファンの話っぷりが、学者すぎます。

例えば、こんなセリフ・・・
----------
だが、外見を変えるということは、以前は重要だった要素二義的な場所を割り当てたにすぎないんだ。(力308)
----------

履歴を消す助けになる技術は四つあるのだそうです。
----------
1)おとりの術(力305)(注意をそらす(ワナにかけ)こと)
2)自尊心をなくすこと
3)責任を負うこと
4)助言者として詩を利用すること。(力306)
----------

ドン・ファンは、当初、幻覚性植物を使ったのが方便にすぎなかったこともあらためて伝えます。(力309)

また、カタリーナとの関係についても、振り返ります。
修行をくじけそうになっていたカルロスに修行を続けさせるために好敵手を使うことで奮起させたのだと話します。(力313)

少し、意外なのは、カタリーナもカルロスもお互いに惹かれあったとあることです。
文中、二人が直接会話をする場面は一切ありません。一目ぼれなのでしょうか?

世界を知覚する新しい方法を学ぶ道は、三つあるのだそうです。
----------
1)日常性を壊すこと
2)力の足どり
3)しないこと
----------

(3)のしないことは、なかなかわかりずらい話ですよね。

ドン・ファンの話も終わり。
カルロスは、服をよごさないように裸になり峡谷を見下ろす岩のところへ行くとドン・ヘナロが待っていました。

またまた、二人がカルロスの両耳に同時に語り掛けると、カルロスは非日常的な感覚に入って行きドン・ヘナロと跳躍をし、日常に戻ったカルロスの汚れた身体をドン・ファンが洗ってくれます。

0 件のコメント: