2016年11月12日土曜日

C.J.カスタネダの話(5)『ドン・カルロスの教え』(29)

1998年4月27日の夜、アトランタ郊外にある家のベッドルームでC.J.Castanedaはぐっすり眠っていた。

父として知っているただ一人の人間にCho-choと呼ばれていたC.J.は目覚まし時計がしつこく鳴るので目が覚めた。

時計をみると4時40分だった。

スヌーズボタンを押すと、部屋の隅にある椅子の上に誰かが坐っていた。

青く光る影、C.J.だけのKiki、カルロス・カスタネダその人だった。

カルロスは若くて、幸福そうに見えた。まだ小さかったC.J.を持ち上げて肩車をするときの顔つきのようだった。昔、借りていたいた家で朝、台所にたってバナナの種をとりのぞいている時の顔つきだった。Cho-choは、バナナの種が嫌いだったのだ。椅子に座ったままカルロスは、C.J.に笑いかけウィンクいた。

C.J.は目をしばたたいた。カルロスがいなくなった。

7分後。4:47分。目覚ましがまた鳴った。C.J.はベッドから起き上がりシャワーを浴びた。

10分後、4:57分。まだ髪は濡れていたが服を着て飼い犬の首輪をつかんで寝室を出て一階に降りた。犬を表に出すとキッチンにいき犬の食事をボウルに入れた。

電子レンジの上にある時計を見ると、11:00となっていた。キッチンテーブルの上にある自分の時計を取り上げた。これも11:00だった。

わけがわからず、犬をまた家の中に入れてベッドルームに戻った。ベッドサイドの時計は11:01となっていた。

「リサ!」彼はささやいた。「リサ!起きて!」

妻は身動きし、寝返りをうち、時計を見た。

「どうしたの?」
「なんで着替えているの?」

「寝てからどれくらい経った?」C.J.が尋ねた。
「すこし前よ。なんで?」
「何時に?」
「11時くらいかな」
「リサ、いま11時1分なのに、どうして少し前なの?」
「何いってるの!」リサは不愉快そうに文句をいった。

C.J.は考えた。もしリサが11時に寝たなら、なぜ目覚ましが鳴って、スヌーズして、シャワーを浴びて一階にいくだけの時間があったんだ?今は11時2分だ。たった1分でそんなにたくさんのことができるわけない。少なくとも20分はかかるだろう―はじめに彼が目が覚めたとき彼女はまだ読書していたっておかしくないはずだ。

計算が成り立たない。

「もう一度寝たら?」リサはそういうとうつ伏せになって枕に顔をふせた。

「しまった!」とC.J。.
「え?」
「わかった!」
「なに?」

C.J.は背骨に奇妙な悪寒が走り、首の後ろの毛が逆立った。

「カルロスが死んだ」

(C.J.カスタネダの話 ~完~)

0 件のコメント: