2016年11月1日火曜日

メリッサ・ウォードの話(1)『ドン・カルロスの教え』(18)

1993年のクリスマスイブ。朝9時。メリッサ・ウォード(Melissa Ward)の電話が鳴った。ひどいインフルエンザに罹ってしまい一人でいたかった。電話がなんども鳴った。しかたなく、ついに受話器を取った。

「ベイビー、調子はどうだい?」カルロスが歌った。
「ごめん、ぜんぜんダメ」
「今夜、夕食大丈夫だよね?」
「カルロス、わからない」ため息をついた「トラックに轢かれたような気分」
「でも君はいなくちゃ。きみのためのディナーなんだから」

彼女は天井を見上げた。
「そのときになってみないとわからないわ」

「そうだ。チキンスープでも作って持っていこうか?」
「いえ、いい」すぐに言った「大丈夫、ほんとに。大丈夫だから」
「そうか、とにかく休んで」カルロスがいった「仕事は休んで、なにもしないで、休むこと。そうして夜に備えて。今夜君は僕たちの仲間になるんだから」

「ええ・・・」メリッサは言いながら前髪をかきあげた。
カルロスはこの怪しいディナーについて何週間も前からいっていた。メリッサは正直、気味悪いと思っていた。

”僕たちの仲間になる!” げげっ。

この時、カルロスは67歳であります。念のため。

カルロスのいいかたで身震いした。なにか明らかにカルトっぽい響きがする。とにかく好きじゃなかった。「なんとかがんばってみる」心のこもったフリをした。

「かならずそうしなくちゃ!」カルロスが大声を出した。「全部準備ができてるんだ。きみは電気の戦士だ!(the Electric Warrior)僕たちは永遠の中から君を見つけたんだ。僕たちは間一髪で君を発見したんだ。きみはこなくてはいけない!」

この作品のはじめ。「”フォロワーズ(The Followers)”の話(前篇)」のところで、Electric Warriorが登場します。
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パンドラ・アベニューに面した左側の入口は、呪術師本人と彼の仲間の女性たちが使用する。
三人の魔女、the Chacmols、the Blue Scout(青い探索者)、the Electric Warrior、の他、内部女性メンバーが使う。”フォロワーズ”は、そこをパンドラ・ゲートと呼んでいた。
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本章(メリッサ・ウォード)のエピソードは、1993年。一方、「”フォロワーズ(The Followers)”の話」の方は、前篇・後編で1997年~1998年のエピソードですので、「フォロワーズの話」に登場する上記の「the Electric Warrior」は、メリッサ・ウォードのことかもしれませんし、他の女性のことかもしれません。Amy Wallaceの本によると、このthe Electric Warrior」は、Amy本人もふくめ、何人も呼ばれていたそうです。

38歳、小柄でチャーミング。Melissa Wardはthe Aleutian chain(アリューシャン列島)の基地でthe Northern Lights(オーロラ)の下で生まれた。

ヒッピー文化にはちょっと若いが、70年代のカウンターカルチャーに親しんで育った。18歳の時にはじめてカルロスの作品を読んだ。ちょうどヨーロッパのバックパッキングから帰ってきて大腸炎にかかって苦しんでいるときで、ハーブで自然治療しようとしていた。たまたま手にとった『イクストランへの旅』の死についての記述を目にして、ハマってしまった。

本に夢中になって一、二時間たったころ外で何かを引っ掻くような変な音がした。ベッドから這い出して窓から外を見た。外のデッキの上に真っ黒なみたこともないような大きなカラスがいた。まるで彼女の気を引こうとするように奇妙にデッキの上を跳ねていた。

『イクストランへの旅』の中でもカラスは重要な役割をしていた。
ドン・ファンの世界では、カラスは強力な呪術師や精霊の化身と考えられている。

ダチュラの作用によりカルロス自身もカラスに変身したことがある。
 ~ 頭から翼、くちばしや足が出て天まで飛び去ったのだ。

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