2016年10月22日土曜日

マーガレットの話(1)『ドン・カルロスの教え』(8)

Margaret Runyanは、つき合って2週間ほどのジョーダン(ヨルダン)のビジネスマンと二人で部屋にいた。

突然、誰かが訪ねてきた。

マーガレットは、ウェスト・バージニア生まれ。酪農家の6人兄弟姉妹。父の一番のお気に入りの娘だった。
ロスにきて15年くらい経つがまだバージニア訛が残っている。
本の虫で分厚い眼鏡。黒髪で青い目。

1960年1月のことだった。
二人は近くの中東料理のレストランで食事を楽しんで帰ってきたところだった。

作家のDamon Runyonの従妹で39歳。自分ではもてると思っていなかった。洋服のデザイナーである叔母の家に家賃なしで暮らしていた。ファッションは若い頃から大好きだった。
だいぶ前に大衆小説家のLouis L’Amourと結婚しそうになったことがあるが、男が貧しかったので見送った。

他の男性とも何回か婚約をした。そして二回結婚をした。最初は詩人。次がマフィアと付き合いのある不動産王。

どちらの男もパシフィック・ベルの交換手として働いていた彼女に仕事をやめて専業主婦になれといった。どちらとの結婚も6カ月ももたなかった。

マーガレットは、初期のポストモダン・フェミニストでニューエイジ・マニアで疑似科学に惹かれていた。哲学、宗教、文学に加え数秘学、占星術、超心理学を好んで読んだ。
ヘルマン・ヘッセとオルダス・ハックスレーがお気に入りだった。

またバルバドス出身の神秘家、ネヴィル・ゴダードの熱心なファンだった。
ネヴィルは、人間は夢をコントロールすることで未来を変えることができると信じ、たくさんの信奉者がいた。

有料セミナーと週一回のレギュラーTV番組を通じてプロモートした自費出版の著書「The Search」などに書かれている自己達成のゴールは、「To Go Beyond(彼方へ)」。

この言葉は、弟子たちの日常と現実世界の認識を揺さぶった。
ゴダードは、イマジネーションの瓶のフタを開けるには友人や愛する人々たちとの絆を絶って個人の履歴を消すことだと信じていた。

カスタネダの教義の原典の一つと匂わせています。

ゴダードは私たちの中に存在するI AMと呼ぶ神のようなものの力を呼び起こし方について説教をし自分は特別な力を持っていると言っていた。
講演中、彼の顔が光るように見えたし、同時に複数の場所で目撃されたこともある。彼は、自分の”エネルギーダブル”と呼ぶ複製をつくることができると主張していた。

”ダブル”も同様です。初期の訳では、「分身」となっています。

セクシーな黒いパンプスをはいたマーガレットが(5階にあったアパートの)ドア越しに来訪者をのぞきこんだ。
廊下には、彼女が5年間つき合っていた濃いオリーブ色のスーツを着た男が立っていた。
栗色の髪をした南アメリカ出身の文化人類学専攻の学生だった。

彼は、Carlos Aranaと名乗っていたが、UCLAにはカルロス・カスタネダとして登録していた。
二人はクリスマス前に別れて以来、会っていなかった。
部屋の中の親密な雰囲気を察し、彼と別れた後も彼女があまり悲しんでいなかったことがわかった。

もともと眼鏡で大きく見える彼女の青い目がもっと大きくなって叫んだ。

「カルロス!」

そして少し恥ずかしげに言った「来るなら連絡してよ」

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