2016年10月15日土曜日

『ドン・カルロスの教え』(1)概要(1)

カスタネダ著作の「ドン・ファン」シリーズのおさらいを一旦中断、タイシャ・エイブラーの『呪術師の飛翔』について書いてきましたが、続きまして、本邦初(だと思いますの記事をご紹介いたします。

タイトルは、
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The Teachings of Don Carlos(Mike Sager著)
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(『ドン・カルロスの教え』)

という記事です。たまたまネットで見つけました。
『飛翔』の連載の間は、やや退屈だったかもしれませんが、この『ドン・カルロスの教え』は、面白いです。

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カルロス・カスタネダの周辺で彼に関係のあった人物のエピソードをオムニバス形式で描き、カスタネダの実像に迫ろうとするドキュメンタリーです。
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この記事は、「LONGREADS」という「長文で良質の記事」を掲載するサイトに出ていました。そのサイトの紹介文を翻訳します。
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Longreadsは、世界のひとびとに読み物を提供するために2009年に設立された。私たちは1500語を超えるノンフィクション、フィクションをはじめ私たちのコミュニティが推薦した多くのストーリーを紹介している。
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とあり、掲載記事はすでに出版されているものでもいいし、自身の著作ではないが是非、紹介したい記事などの情報も寄せて欲しいとあります。

「Longreads」の紹介文によると、この『ドン・カルロスの教え』は、マイク・セイガー(Mike Sager)というライターが1999年、”ローリング・ストーン誌”向けに執筆したものだそうです。

しかしストーン誌が、紙面が足りないことを理由に掲載を見送ったので(雑誌出版では珍しい理由だそうです)自分の最初のコレクションである”Scary Monsters and Super Freaks”で2003年に出版したそうです。

この記事をLongreadsで見つけたのち、アマゾンでタイトルを検索したところペーパーバックとKindle版で同記事を収録した本が出版されていることを知りました。

Stoned Again: The High Times and Strange Life of a Drugs Correspondent 』(2015/4/21)


著者のマイク・セイガーの作品を集めた本で、その中にこの『ドン・カルロス』が収録されています。
タイトルを完全に意訳しますと
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『ドラッグ世代の奇妙な生活よもう一度』
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かな?

99年に寄稿したものの没になった。でも面白いので自薦か他薦かによりLongreadsに2003年に公開された。その後、マイク・セイガーの作品集発行の際、あらためて同文が収録された。という流れです。

余談ですが、2003年には、エイミー・ウォレス(Amy Wallace)の『Sorcerer's Apprentice: My Life with Carlos Castaneda (呪術師の弟子)』が出版されています。

Amy Wallaceの本は、カルロス・カスタネダの正体について書かれた決定版と言えますが、マイク・セイガーは、時期的にこの『呪術師の弟子』を読んでいません。

エイミーはカルロスのいわば身内(恋人)ですが、セイガーは部外者としてとてもいい線まで近づいていますし語り口も皮肉っぽく楽しめる内容になっています。

(エイミーの方は、まだ半分しか読んでいませんが、いわばカルト集団体験記ですのでけっこう読むのが重苦しいです)

セイガーの記事は、今後も日本語化される可能性は限りなく低いと思います。
でも一応、商品化されている記事ですので当初、全抄訳をご紹介しようと思っていましたが、著者の許諾も得ていませんので概略と一部引用という形で抄訳を載せることにしました。

あたしも人様の文章、それも2万3000ワード(文字数11万)の英文をかりにも翻訳するなんて生まれてはじめてのことですので、途中でくじけるかなと思いましたが、そこはやはり興味のあるテーマですから最後までなんとかやりました。

ということで以下ご了承ください。
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・素人翻訳なので誤訳ふくめ無保証です。おまけに相当簡略して意訳しています。

・一部、文学調でレトリカル過ぎたり、英文の評論にありがちな教養をひけらかすような、情景描写を演出するため修飾語の羅列などは割愛しています。

・他にもカスタネダ批判で有名なリチャード・デ・ミル著『呪術師カスタネダ ~世界を止めた人類学者の虚実~』(『虚実』)に記載された批判の事例なども『虚実』の紹介の際にあらためてご紹介したいのでここでは省略しています。
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例えば、本記事の冒頭ですが、上記の免責事項の二番目の例としては、こんな感じの文章が多いんです。
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8月上旬、少し涼しい火曜日の夜だった。空はロスにしては晴れていた。神秘的な空が10年落ちの車の窓ガラスを通して誘い込むように瞬いた。
コオロギの声、犬が吠えている。エンジンの熱でむっとしていた。
次のミッションに備え彼らはしばし無言であたりに漂うジャスミンの香りを楽しんだ。
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これでもデミルの『虚実』よりは教養ひけらかさない分だいぶマシです。

(つづく)

1 件のコメント:

那賀乃とし兵衛 さんのコメント...

おもしろい記事の紹介ありがとうございます。
ほかのカスタネダ関連の記事も充実していて、これからぼちぼち読ませてもらうのが楽しみです。
それではまた。