2016年9月26日月曜日

旅14 力のあしどり(2)

丘の頂上にのぼり、いつものように焦点をあわせずにあたりを見て、良い場所を探すように言われ、ドン・ファンがその場に生えているかん木から用意した葉を利用して苦労して見つけだします。

ドン・ファンが機械仕掛けの僧のおもちゃのように目の動きと同時にくるっと一回転します。マジカルパスでしょうか?(体術)(旅232)

「今日は、おまえは闇のなかで力を狩ることになるだろう」
「今夜、おまえはこの未知の丘を探検するんだ。闇のなかじゃ、それは丘じゃないんだ」

カルロスは、ドン・ファンがいつも気味の悪いことをいって怖がらせると不平をいいます。
同感です。

「世界は神秘なんだ」
「だから、おまえが頭に描けるようなもんじゃないのさ」

あたりが暗くなるまでの間、二人はまたまた乾燥した「力の肉」を食べます。

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ドン・ファンが立ち上がり、腕と背中をのばした。そして、わたしにも同じことをするようにいった。彼によれば、眠ったり、すわったり、歩いたりしたあとでからだをのばすのは良い運動なのだ。(体術)
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ドン・ファンによらなくてもそうですよね。アップルウォッチもたまに体を伸ばせって言いますから。

これから暗闇の中を歩くが、少し先をドン・ファンが行ってフクロウの声を出すからそれを頼りについてこいと言います。
そして闇の中を”走る”ための歩き方『力の足どり』(体術)と呼ぶ、特別な歩き方をやって見せてくれます。

どのような態勢かカスタネダははっきりと書いていません。
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ドン・ファンの胴体はいくぶん前へ曲がっていたが、背すじはまっすぐだった。ひざもいくらか曲がっていた。
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一歩足を踏み出すたびに、そのひざがほとんど胸のところまで上がっているのがわかった。
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ドン・ファンは暗黒の中へサっと走り去り、やがてまたもどってきます。
カルロスは信じられないことがおきていると思いますが、ドン・ファンはカルロスにもやるように指示します。

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彼は、しばらく一カ所で足ぶみのようなことをしていた。彼の足のあげ方は、短距離走者のウォーミングアップを思わせた。(旅239)
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怖がって転んでしまうカルロスの姿勢をドン・ファンが直します。
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彼は、両手の親指と人さし指はまっすぐのばし、他の指は折って手のひらにつけておかねばいけないと言った。(旅240)
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そのすぐ後に、目の使い方が詳しく書いてあります。面白いので長いですが引用します。
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『力の足どり』というのは、休憩の場所を探すのに似ていた。その両方に、身を任せたり信じたりする間隔が伴っているからである。
『力の足どり』をするには、どちらかの横に目をやると動きの流れが変化してしまうので、まっすぐ前だけを見ている必要があった。彼は、目の位置を低めるためにからだを前に曲げ、一歩一歩を短く確実にひざを胸まで引き上げる必要があるのだ、と説明してくれた。そして、最初は何度もつまずくだろうが、それを練習しているうちに昼間走るのと同じくらい速く、安全に走れるようになる、と保証してくれた。(旅240)
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だれかやってみた人いますか?

ところで、実は以下が、この章の本題なのですが、「力のあしどり」は原文ですと”gait of power”となっています。
gaitというのは文字通り「あしどり」という意味だそうです。

ところがあたしが初めて読んだ1978年当時、gaitという単語を知りませんでした。
しかもペーパーバックをざくざくっと読み流していますからgaitをgateと読み間違えて覚えていました。

「真っ暗闇の中で走る技って”力の門”っていうんだ。かっこいいなぁ」と完全に30年間勘違いしていたのです。

で、この度、おめでたくも『イクストランへの旅』を日本語で読むにあたり「ゲイト・オヴ・パワー」という章のタイトルをどのように訳しているのだろうと思ってみたら「力のあしどり」となっている。

これは翻訳者の真崎氏が気をきかせてこんなタイトルにしたんだぁってまだ思ってまして。
でもなにか変だなと思い再度英語版をチェックしたら・・・・スペルが違うじゃないですか。

世界は思い込みです。

1 件のコメント:

三代 さんのコメント...

とても参考になるサイトで感激しています。
何十年ぶりにカスタネダを再考、いや再実践しようと思っていたので。

さて、力のあしどりは、もう30年ほど前に試してみて、その効果は実証済みです。
真似て走れば、思考を止めるとは、どういう状態かがわかります。
その持続が難しいのですけどね。
ジョージ・レコナードがサイレント・パルスで示したソフト・アイと同じことです。
ただ、ソフト・アイの状態で、草原を疾走するんですけどね。