2016年9月14日水曜日

旅8 生活の型をこわす

1961年7月16日は、一日中太ったリスのような齧歯類の動物を見て過ごしたそうです。

デミルも書いていますが、意図してか、出版のなりゆきかカスタネダは、時間軸を前後させてエピソードを書くので読者の事象把握の感覚がマヒしてしまう傾向にあります。

シリーズも三巻目なので読者はドン・ファンの語り口や彼らの修行パターンに慣れてきて「だいぶ後のエピソードなんだなぁ」とついつい考えてしまいますが、この「リスのような齧歯類」を見て過ごしたのは弟子になってまだ日が浅い時期でカルロスはペヨーテも未体験です。

さてこの齧歯類のことをドン・ファンは「水ネズミ(water rats)」と呼んでいたそうです。
第一印象では続く、水ネズミの行動様式から「プレーリードッグ」のことを言っているのかなと思いまして。でも、その場合、ドン・ファンはさすがに「水」ネズミとは言わないのではないでしょうか?

最初、日本語でGoogったのですが、みなさんはやめておくことをおすすめします。
捕まえたネズミを水に・・・の画像が山ほど出てきます。
英語でGoogるのは大丈夫です。

このネズミの正式な名前を明かしていないのをまたまたデミルは非難していますが齧歯類は非常に種類が多いので結構むずかしそうですね。
ま、文化人類学者なら標本を捕まえて種類を明らかにしろというところなのかもしれませんが、生物学者じゃないですからね。

Muskrat Foraging.JPGさて、英語でwater ratをひくとまっさきにマスクラット(Muskrat)がかかってきました。たしかに太ったリスでビーバーに似ています。しかし、ドン・ファンたちの活動の中心はアリゾナやソノラの砂漠地帯ですよね、水と縁の深いネズミがいますかね?
でもドン・ファンの家の裏手には農地によくある灌漑用水路があるので水もあるにはある地域です。

マスクラットの生態を英語版WIKIでひもとくと「マスクラットは、北米カナダ、米国そしてメキシコの北部の一部の地方にいる」と書いてあります。
ここではマスカラットにしておきましょう。


検索作業の流れで素晴らしい本を見つけました。
A Field Guide to Mammals of North America, North of Mexico
(北アメリカ、北メキシコの哺乳類現地調査図鑑)

まさにあたしたちのための本じゃないですか。
これを買えば水ネズミの正体がわかるかもしれません。がんばってください。

ドン・ファンはワナのしかけかたを教えていましたが。お昼のサイレンのまねなどを突然はじめてカルロスをからかいます。
生活のきまりきった型にしばられているカルロスに型をこわすジェスチャーしたのでしょうね。

決まりきった生活パターンで過ごすと狩人ではなくて逆に狩られる獲物のようだといいます。

シカは、生活にきまった型を持たないので出会うことがとてもむずかしい生き物だそうです。ドン・ファンは不思議なシカに出会ったときの話をします。(旅119)

不思議なシカに追われるのが怖くなりドン・ファンは逆立ちをしてしくしく泣いていたらシカに話しかけられたというのです。
もちろんカルロスは信じません。万城目学は信じると思います。

でも、鹿に追われるのって怖いものなんですか?その不思議な鹿が怖かっただけなのかもしれませんが。この理不尽な感じってかえってリアルな印象を持ちます。

この章でドン・ファンの容姿に関するコメントがありますので記しておきます。
ドン・ファンが「水ねずみ」の様子をまねたのが可笑しかったときの話です。
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ドン・ファンの容姿で頭が丸くてプレーリードッグに似ていることがわかった。(旅117)
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え?!やっぱりプレーリードッグだったのかな?


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