2016年7月27日水曜日

分離したリアリティ ~序文~

いよいよ(って先は長いですが)『分離したリアリティ』に入ります。
以前にも書きましたが、ドン・ファンシリーズを読み始めるのは、この巻から入るのがいいと思います。

『ドン・ファンの教え』からですとドラッグの話が中心で登場人物は少ないし、後半のフィールド・ノートがちんぷんかんぷんだし話の展開も平坦だからです。
カラスの話があるので、あたしゃ好きですけどね。

その点、この『分離したリアリティ』では、あのドン・ヘナロを始めさまざまな登場人物たちが彩りを加え始めます。

この巻では、いったん弟子修行をギブアップしたカルロスがずるずるっと元の弟子生活に戻っていく流れでカルロスは第二期と呼んでいます。身体が離れられないの類ですな。
知者になるには軽やかで柔軟でなけりゃいかん(分離16)」とか言っていいくるめられてしまいます。

この第二期では、呪術師の必修科目「見る(seeing)」ことについて多くを学びます。(分離16)
あたしたちが目にしているこの世界は「見る」とまったく異なる様相を呈してくるそうですが、幸か不幸かあたしがその姿を見ることはなさそうです。

またまたドン・ファンが誘惑します。
「見る」にはきざみを吸うことが必要不可欠である」
「あのはかない世界をかいま見るのに必要な速さを与えられるのは煙だけだ」

ここでいう「速さ」というのは、ドラッグを使わないとなかなか見る力を身に着けることができないという意味です。

※と書きましたが、間違いでした。これは文字通り「スピード」のことです。

そして、なんと!(ってあたしだけですが)この二巻目の序文で、すでにドン・ファンをカルロスに紹介した友人の名前(ビル)が公開されているのですね。
これまで、まったく気が付きませんで『無限の本質』までわからないのかと思い込んでいました。(出会った町の名前は、まだ明かされていません)

前巻のラスト「戦いの形 (教え11 魂の奪回)」で、ドン・ファンが「わしはもう戦士でもディアブレロでもない」、じゃ何なんだ?という疑問を呈しましたが、いきなり答え?が序文で書かれています。

自分は「ブルホ」(brujo)である。それは、呪術師、医術師、治療師のような意味である。(P13)また、呪術師を知者と呼び換えているそうです。

ドン・ファンは「見る」のを得意?としているが、違うことが好きな呪術師もいるといい、その例として「サカテカ」という人物を例にとります。(P20)
サカテカは、見るのではなく「踊る」のを得意としているそうです。

カルロスは、この巻でドン・ファンを伴わずにドン・ファンの知り合いだということで二人の呪術師をノンアポで訪問します。その内の一人が、このサカテカで、1962年5月14日に訪れたとあります。
もう一人、ヴィサンテはこちら

最初に知り合った経緯は書かれていませんがカルロスがサカテカをもともと知っていて、いつでも訪ねてくればいいと言われていたからです。

(※カルロスが参加したミトテのメンバーだったのかも?)

ところが、その言葉とは裏腹に訪問したカルロスに何の用だ、とばかりのそっけない態度をとります。このテの気分にムラのある奴ってイヤですよね~(笑)

このサカテカが、ドン・ファンが「見る」のを好むのに対して「踊る」のが好きなのだそうです。(P20)

それはさておき、カルロスはサカテカを訪れた際、「ドン・エリアス」という呼びかけをします。家をたずねると最初は留守で、老婆が出てきます。ドン・エリアス(サカテカ)の奥さんだそうです。

このエピソードは、以降もここでしか出てきませんがシリーズ後半に明らかになるドン・ファンの恩師の恩師、ナワール・エリアス(Elias)、その人なのでしょうか?
もしそうならば、家にいたこの老婆こそ、彼のパートナー、アマリアだったのではないでしょうか?
(技法P128)

追記2016/07/30)この”サカテカ”は、どうやらドン・ファンの師匠の師匠ではないようです。
師匠の師匠のナワール・エリアスは、エリアス・ウリョア(実践P9)がフルネームなので、違うのかなと思います。ただ、ミドルネームなどもありますので、ここでは違うらしいとだけ書いておきます。

もうひとつ面白い描写があります。カルロスは、サカテカを訪問したとき肩からテープレコーダーを下げていたと書いてあります。

サカテカを訪ねたのは、1962年の5月です。カセットテープは、ウィキによるとフィリップスが1962年にはじめてリリースしたとあるのでアメリカ人の学生がいきなり手にしているとは考えにくいと思います。となるとオープンリールでしょうか?カセットが世に出るくらいですから小型のテープレコーダーくらいは市場に出回っていたかもしれません。東京オリンピックの二年前、日本の放送が始まって10年経っていない時期です。カルロスは、金持ちだったのでしょうか?

いずれにせよ、手書きメモの猛者とも思われるカルロスが文明の利器をもってインディアンを訪ねている光景は新鮮です。ドン・ファンには録音を禁じられていましたが、一般的なフィールドワークでは使用していたのかもしれません。

また、ドン・ファンとの対話をいかにメモが得意だとしても、あれほど克明に生き生きと再現できるのだろうか?(だからフィクションではないのか?)と思ってしまいますが、ひょっとするとカルロスはドン・ファンに黙って内緒で録音していたのでは?とも思います。(本当にあった話だったとしたらですが・・・)

追記2017/4/27)あたしの後日談があります。この時期、カルロスが私物のテープレコーダーを持っているのは不自然ではありません。

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