2012年4月12日木曜日

小説浅草案内

桜は散ってしまいましたが、春ですね。

あたしはSF小説家、半村良の大ファンでありまして、直木賞を取って「一般」の小説家に転じたときは複雑な心境でしたが、彼の手になる市井の人々の姿はSFでなくともステキでいろいろ読んだものです。

そんな中、存在も知らず未読のものが『小説浅草案内 』という作品でした。
すでに絶版になっていた10年前ほど、友達に教えられて近所の古書店で買い求めました。

浅草周辺の人々を描いた短編小説集なのですが、本当はみんな脚色された「実話」です。
免責&ネタにされた人たちに迷惑がかからないようにタイトルにわざわざ「小説」とつけたとみました。

しばらく下町を離れていた主人公(半村良本人)が、久々に故郷に舞い戻り、浅草寺の裏手、吉原方面にある浅草の見番のそばにアパートを借りて住み始めたところから話がはじまります。

各話は、たいがい近所の店で仕込んだ話題でして、店というのは飲み屋であります。
本の奥付を調べてみますと出版されたのが1988年。絶版になってから買った本ですので初出の小説誌に掲載された時期はもっと古いですね。
それでも、書かれた店や地名を確認したくて訪ねていったときもあります。

小説の文脈をくみ取って、ようやく見つけたある飲み屋さんでは、この本に登場するマスターはすでに亡くなられた後で、本を読んで来たと言ったら後をついだ奥さんがすごく喜んでくれたこともあります。
なので、エピソードは脚色はしてあってもおそらくみんな本当の話です。

続く

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