2011年5月16日月曜日

赤いネコ(2)

赤いネコ』は、アトムのエピソードの中でも一風変わっています。

マンガの導入部とエピローグの部分に「ヒゲオヤジ」が登場して読者に武蔵野の自然について語りかけます。

大切な武蔵野の自然が失われつつあるなぁ。という独白なのですが、ここで国木田独歩の『武蔵野』を引用しています。

のんびりと武蔵野を歩くヒゲオヤジの姿は小学生だった自分でも逍遥を誘われるエピソードで忘れられません。

ところで国木田独歩の語る武蔵野は、「渋谷」近辺だったりするので完全に自然は崩壊しちゃってますな。

もし今、武蔵野の面影が残っているとすれば埼玉の平林寺近辺~野火止~清瀬エリア。南に下りましてそれこそ現武蔵野。ってところでしょうか。東京にはもう武蔵野は残ってませんな。え?武蔵野市は東京だって?えへへ。ま、いいじゃないですか。

「赤いネコ」では、ヒゲオヤジが読者の子供を想定して原文をかみくだいて話してくれてますが、下記は原文のママ引用します。

武蔵野に散歩する人は、道に迷うことを苦にしてはならない。どの路でも足の向く方ゆけば必ず其処に見るべく、聞くべく、感ずべき獲物がある。(中略)
されば君若し、一の小径を往き、忽ち三条に分かる処に出たなら困るに及ばない。君の杖を立ててその倒れた方に往きたまえ。或はその路が君を小さな林に導く。林の中ごろに到て又た二つに分かれたら、その小さな路を撰んで見たまえ。あるいはその路が君を妙な処に導く。

その後、あたしは、ヒゲオヤジの薦めに従い「武蔵野」を読んだわけでして。マンガなんて読んではいかんなんて昔から言われてましたが、よい影響もたくさんあったのですよ。




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